働き方改革と人材育成

経団連の会長が「就活ルール」の廃止に言及したことが波紋を広げています。果たしてこのことは、本当に問題なのでしょうか?

そもそも、日本の人材採用の仕方はメンバーシップ採用であり、欧米のジョブショップ型採用とは違う形態であることを念頭に考えていくべきです。日本の人材育成方法は、一つのことを集中的にやらせるようなものではありません。経営幹部を育成するために、様々な職種を経験させてその中から選抜していくのです。インターンという形態もジョブショップ型を前提にした欧米型採用方法です。日本のマスコミはこのことをもう少し勉強してから報道をして貰いたいものです。

新規採用者が統一して一時期に採用されないようになれば、学生が大学を卒業してから一定期間に海外で何かを学ぶことができるようになります。ある種の知見を得られることにもなります。これは、両者のミスマッチを防ぐことにもつながります。3年以内に3割が退職するという「悲劇」も減少してくるはずです。

新規採用者に社会人としての「常識」を教育する必要があるという会社には、「気合と根性」だけを植え込むような「前時代的な教育会社」ではなく、組織と人間を正しく教えられる「まともな教育会社」に新人を委ねれば良いと思います。その余裕が無い会社は、OJTの中に社会常識の教育を取り入れていくしかありません。また、中小企業のグループ化を行って「新人教育」を実施しても良いでしょう。

過去に様々な制度改革が行われてきましたが、今までの日本企業はきちんと対応してきました。電通事件で自殺者が出たことを教訓にすべきです。失われてしまった貴重な人的資源を無駄にしないためにも、資源を活かす方法を大企業も中小企業も考え直す時期に来ているのです。人的資源は刺激の与え方を間違えると能力が減退していきます。正しく刺激を与えれば大きく成長していきます。企業経営者は、今こそ古い考えを捨て去る時期にきているのです。