最低時給を上げれば人材は集まるのか?

最低時給が2019年10月より、現在の時給の103%に上がります。東京都では1013円になりますね。大企業は、元々時給が高いので今回の改訂ではあまり影響はありませんが、野党の皆さんはもろ手を挙げて賛成していますね。しかし、中小企業にとっては死活問題になることを政治家の方々はご存知なのでしょうか。

その理由は、日本の雇用者数の7割を占める中小企業では、ほとんどの企業がこの費用を売上に転嫁できないで、値上げができない状況です。大企業は中小企業に価格低減を求めても、値上げなどは認めてくれないのです。この現実を野党の方々はご存じなのでしょうか?しかも時給が上がっても多くのパートタイマーである主婦の方々は103万円の「壁」に阻まれて、働きたくても働けないのが現実なのです。

では、最低時給が上がれば、働いている人の労働環境は改善されるのでしょうか?それは違います。働き方改革もまともにできていない企業が多いのに、給与だけを上げても何も改善されませんよ。1959年にアメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱した二要因理論がそれを証明しています。給料を上げても人は決して満足せずに「もっとくれ!」と次の月には言うのです。人は能力を正当に評価されて初めて働きたいと思うのです。現在では、内発的動機付け理論がこのことを証明しています。

正しい「能力評価システム」と「人事考課・給与評価システム」を構築している大企業や中小企業が少ないのは現実です。一昨年、昨年、今年と経営相談窓口で約100社の中小企業の社長とお話をしてみて、システム未構築の企業がいかに多いか良くわかりました。人の教育は時間がかかるものです。しかし、やってやれないことはないのです。人材育成は企業の利益を生み出す源泉になります。

中小企業の社長は今日から、能力評価と人事考課を始めてください。良い人材は育成するもので、採用で得られることは決してありません。人員削減などと軽々しく行っている大企業を真似してはいけません。人手不足の今だからこそ、この重要なことを考えてみてください。