スマートフォンとコミュニケーションスキル

先日、遅い午後に地下鉄で見かけた風景です。ある車両の両側の席に座っていた乗客10名のうち9名がスマートフォンを操作していました。一人は寝ていたので、実質的にスマートフォン操作は100%でした。私は、いけない事とは思いつつ何をしているのかと「見てみぬふり」をして覗いてみると3人の人がお買い物の最中でした。時間を上手く利用しているのですね。

ただ、母親と中学生の娘さんとが夢中になってスマートフォンの画面を見つめていました。時間にして10分くらい一言も口を利かずに操作を繰り返していました。流石にこの風景には、違和感を感じました。親子の会話をできるはずの時間に二人とも機械の画面を注視しているだけなのです。10年後、もし同じ光景だとしたら私は「危うさ」を感じます。

4年前、広島県経済同友会の交流部会長に企業の人事研修についての意見を伺ったところ、若手社員に一番欠けている能力が「コミュニケーション能力」であると断言していました。相手に自分の考えを上手に伝える能力が無いと嘆いていました。「スキルが無い」ということは大げさにしても、それに近いことが現実に起きているということです。この現象とは反対に、1年半前から社員に対話を続けてきた社長が先日仰っていました。最近、社員から質問や意見が増えて主体的になったと喜んでいました。毎月、対話することの重要性をお伝えしててきただけに「嬉しい一言」を貰いました。

脳科学者が言うには、コミュニケーション能力が高くなるかどうかは3歳までに決まるそうです。スマートフォンが普及して、殆どの人が使いこなしている現在(私はガラケーですが)、人は進歩しているように見えます。しかし、一番大切な「人とのコミュニケーション能力」が低下しているという事実をほとんどの人は認識をしていません。子供が言葉を話せない時に、親が子供に話しかけることや本の読み聞かせをすることは重要なことなのです。脳に刺激を与え続けることがとても重要なことだからです。所詮、スマートフォンは「道具」にすぎません。「道具」を使いこなしていると勘違いしている間に、一番大切な「コミュニケーション能力」を失っているのだと私たちは自覚しなくてはならないのです。たった今から、自分の子供や部下とコミュニケーションを取ってみてください。必ず、あなたの周りはハッピーな人が増えていくと思います。