最低賃金と能力評価と人事考課

2020年8月8日現在で最低賃金が議論されており、41都府県が決定して東京都、静岡県、京都府が据え置きを決めています。厚生労働省の審議会の議論が難航して審議会の一部の委員が退席するという事態がおきています。

生活するための最低保障を求めるために毎年議論を重ねるのは良いことですが、時給を上げれば良い人材が集まってくると思っているとすれば大きな勘違いだと言わざるを得ません。時給を上げないよりは上げたほうが良いに違いありません。ただ、ほとんどの企業経営者がそこで終わってしまっています。時給を上げるということは単に最低レベルの生活を保障しているにすぎないのです。給与だけで人を集めようとすれば、高い給与を貰っている人は必ず、その翌月には「もっとくれ」と言い出します。

人材育成で重要なのは、最低賃金ではありません。教育している人材の「能力」をいかに評価するかです。人間であれば、目の前の「人参」には釣られて仕事をすることはなく、仕事の評価に対して「ヤル気」を出してくるものです。※ 人は権限の委譲による仕事の評価で次のステージを目指していくものです。対象の人材が、チームの課題を解決するための『プレーヤー』なのか『会社の駒』なのかによります。当然のことながら、『プレーヤー』となることを求めてきます。

仕事の達成度により自分の能力を会社に認めて貰い、その結果として人事考課で給与が上がるという手順を踏まなければ、人は良い成果を上げることはしてくれません。良い人材は「採用する」ものでは無く、「育成する」ものなのです。最低賃金が議論される時期に自社に最適な「能力評価システムの構築」と「人事考課システムの見直し」に着手する必要があります。コロナ禍の今こそ、企業経営者は、人材育成に目を向ける時だと自覚してください。

出所:ハーバードビジネスレビュー編集部[2009動機づける力ダイヤモンド社