最高裁判決を読んで
10月14日と16日の新聞記事で最高裁の判決の内容を読みました。日本の最高裁判事の判断に違和感を覚えました。アルバイト・非正規社員には賞与や退職金を支払わずともよく、契約社員には支払わなくてはいけないという論理が展開されていました。同一労働であるならば、同一賃金であるはずです。日本の労働賃金体系が間違っているから問題が生じてくるのではないでしょうか?
労働に貴賤の上下があるのでしょうか?無い筈です。残念な判決に裁判官の労働力に対する意識が70年以上前の論理のままのように見受けられます。根本的に、日本人の人材に対する意識を高める必要があります。OECDのデータでは、日本の最低賃金が29か国中下位3ヵ国の中に入っており実に恥ずかしいことだと言えます。日本は、マズローの動機づけ理論の中の「生理的欲求」さえも満足していない国といえます。
人手不足の解決の一つを述べると、企業が人を採用する時にパートであれ、非正規社員であれ社会保険に加入させて経費の負担を増加させることをお勧めします。従業員の給与が少なければ、企業が全額を負担するか傾斜制度負担にすればよろしい。ちなみにドイツでは2003年に既に導入しています※1。高額な費用をかけて育成していかなければ人材は定着しないと企業が自覚すべきです。人材は費用以上に貴重な資源と言えるのです。余りにも無責任に人を採用して、トレーニングシステムも無いまま従業員を業務につかせている事実が多いため、人材は定着しづらくなっています。自社の教育システムを見直すことから始めましょう。
企業経営者は人手不足と嘆く前に足元を見直すことが必要です。能力評価システムは充実しているか?定期的に内容を更新しているか?人事考課システムは公平で透明性があるかなど企業として従業員を教育・育成する姿勢を持っているかが重要です。女性・高齢者を短時間でも積極的に採用し戦力化しているかなどやれることはいくらでもあります。いっそのこと定年を撤廃するという方法もあります。あれもできない、これもできないと言い訳している企業には、決して人材は集まってこないと自覚しましょう。
※1 出口治明[2020]『還暦からの底力』講談社現代新書pp32-34