定期昇給を止めよう

最近、新聞記事で「どこどこの企業が何%の定期昇給を決定した」という項目を目にすることが多くなりました。給与を上げることは決して悪いことではありません。むしろ、日本企業の給与は先進7か国と比べて著しく低いことで有名です。中小企業も含めて給与を上げなければ働く従業員の生活水準は高くなりません。

ただ、私は一律に定期昇給することに賛成できません。その最大の理由は、会社の業績を向上させることに貢献していない従業員の給与も上げることになるからです。このことは正しい能力評価システムを導入している日本企業があまり多くないことに起因しています。

組織論を学習すると「2対6対2の原則」という言葉を知ることになります。会社の業績向上に関わった人は従業員全体の8割で、残りの2割は積極的に貢献していない(むしろ業績向上を阻害している)人たちがいるという意味です。定期昇給と言えば聞こえは良いですが、サボタージュをしている人の給与も上げるということなのです。一律に上げるということはそういう意味なのです。経営者が真摯に従業員に対して人材育成をおこなっていないことが定期昇給という言葉を生み出したとも言えます。サボっていてもお金は貰えるという酷い状態を指しています。

人は昨日よりも今日、今日よりも明日と向上していく「生き物」です。企業には向上心を持った人がかなりの割合を占めているはずです。経営者が能力開発をせずに正しく評価をしないことで、従業員の能力が発揮されずに停滞することになってしまいます。定期昇給をすることは高い能力を持った人の「やる気」を削ぐことにつながります。正しく能力開発をして「正しく人事考課」をすれば従業員のやる気は向上していきます。その結果企業業績も向上していきます。労働組合が推奨する「定期昇給」は、「サボタージュしている人たち」を守っているということなのだということを経営者は自覚すべきです。経営者は定期昇給の額を最低限に留めて、能力開発のほうに力を入れて欲しいものです。