最低賃金についての考察
7月10日の日経新聞の記事で最低賃金について労使の立場からの意見が述べられていました。最低時給について、日本は2018年のOECD加盟国の主要先進国中11位です。上位にはオーストラリア(12.1ドル)、ルクセンブルグ(11.8ドル)、フランス(11.5ドル)、ドイツ(10.9ドル)、オランダ、ベルギーなどが占めています。ちなみに日本は8.1ドル(866円)です。物価等を考慮しても日本の最低時給は決して高いとは言い難いものです。
経済学で物価を説明する時に使われるものに「ビッグマックレート」なるものがあります。東京ではビッグマックセットが690円です。シドニーでは843円で約1.22倍です。これをみても日本の最低時給がいかに安いかがわかります。日本商工会議所の三村会頭は中小企業の経営者には、既にコロナ禍で負担がかかっているので最低時給を上げるべきでは無いと述べています。それは真実でしょうか?コロナ禍より以前に経営状況が悪化していたとするのが事実ではないでしょうか?この事実を見ないで最低時給を上げるのを止めるべきだと主張するのには無理があります。何か論理のすり替えをしているように感じました。
ある大学院の教授が調査したところによると、4年前にニューヨーク市で販売されていたスマートフォンの価格が800ドルで、都市伝説として原価が17ドルと言われていました。しかも、この部品の95%は日本製なのです。大企業が自社製品を余りにも安く海外に販売し過ぎるのではないかということが推定されます。日本企業の経営者は価格についてきちんとマーケットリサーチをされているのでしょうか?安く売り過ぎているから中小企業に部品を安く供給するように求めすぎているように私は感じてなりません。(大企業の横暴を中小企業の社長から直接聞きました)日本の中小企業の生産性が低いというのはこの点にも原因の一つがあると思います。
もうひとつ、労働者側に問題点はないのでしょうか?定刻で帰るための努力を従業員はしているでしょうか?無駄な事務作業を削減するように会社側に要求しているでしょうか?業務の30%は無駄な業務であると言われています。※ 企業は無駄な業務の削減に努め、従業員は定刻帰社を原則としてすることで生産性は確実に上がっていきます。客単価を上げて売上を伸ばすとともに、残業を無くして定刻に帰社できる仕組みをつくることは最低賃金を上げると同時に必要なことです。当然のことですが、能力評価を実施することは生産性を上げるためには重要なことです。従業員教育システムの構築を今日から始めれば業績は必ず向上していきます。最低賃金を引き上げるためにも、人材教育システム構築の必要性を経営者が感じて欲しいものです。
※2018年7月~8月調査 求人情報サイト「はたらこねっと」1146人回答