まずは対話から始めよう
最近、中小企業の経営者とお話をしていて感じることがありましたので述べます。『正しい見積書の作成方法について何度も教えているのに自分勝手な方法でしか作成してこないので困る』と嘆いていたことです。結局自分で作成し直すことが多いと言うのです。
この事実を言われて問題点が三つあると考えます。一つ目は社長の考え方(基準)を明確にしていない点です。彼に伝えたはずなのに理解していないのは、その『伝え方』に問題があるのです。社長が基準をどこに置いているのかを具体的な実例を挙げて伝える必要があります。二つ目は彼が作成する見積は、それを提出することで製品を作る側(会社)が利益を得られること、製品を受け取る側(顧客)が満足を得られるかの二つを彼が理解していない点です。いわゆる、顧客満足度と利益追求の達成がなされていない点です。三つ目は社長が彼に権限移譲をしていないことです。
『伝え方が9割』注1と言う書籍を読んでみると「伝え方には技術がある」そうなので訓練すれば上達するそうです。経営者である社長は、伝えたいことをきちんと分析することが必要なのです。ある企業では、ある現象を捉えて何故そうなるのかを5回ほど深く掘り下げて考えることを推奨しているそうです。そうすることで行うべきことの本質が見えてくるそうです。
経営者は、何故そのことをやるのかを任せる人間に明確に伝え、必ず理由があることをきちんと説明する必要があります。何故それをやるのか彼(彼女)がそれをやることで、どんなメリットが会社と従業員に得られるのかを伝え、彼(彼女)がその仕事をやり切るためにフォローすることが必要です。会社に大きな損害を与える前にチェックをすることも必要ですが、小さな失敗を多少してもそれを責めずに、何故それが失敗に繋がったのかを考えさせることで彼(彼女)は成長することができるようになります。人材育成については様々な方法があります。まずは『対話』から始めてみると結構上手くいくことがあります。是非、試してみてください。
注1:佐々木圭一[2022]『伝え方が9割』ダイヤモンド社