給料を上げても人材は定着しない
先日、日経新聞を読んでいて「公務員給与、若手に重点」という記事を読んで違和感を覚えました。初任給を引き上げて他社より給与面で優遇すれば人材は定着するという考えを未だに大半の社長が持っていることに驚きを禁じえません。大企業の人事関係者に限らず、中小企業の社長は従業員の給与を上げさえすれば、従業員が満足して働くようになると勘違いしています。ハーズバーグが提唱した「二要因論」※1 は70年前から学者によって説明されています。人は仕事を評価されることによって「やる気」になると言われています。
人手不足の解決方法はを述べると自社の教育システムを見直すことです。ある程度の費用をかけて人材を育成しなければ定着することはないと企業が自覚すべきです。人材は費用以上に貴重な資源と言えるのです。人員が不足しているからといって無責任に人を採用して、トレーニングシステムも無いまま従業員を業務につかせていることが非常に多いのが現状です。
企業経営者は人手不足と嘆く前に足元を見直すことが必要です。能力評価システムは充実しているか?定期的に内容を更新しているか?人事考課システムは公平で透明性があるかなど企業として従業員を教育・育成する姿勢を持っているかが重要です。女性・高齢者を短時間でも積極的に採用し戦力化しているかなどやれることはいくらでもあります。今まで50社以上の中小企業の社長に対して「窓口相談」をおこないましたが、そのほとんどの社長が従業員が自発的に仕事をしなくて困っていると悩みを打ち明けてきました。良く内容を聞いてみると、能力評価システムと人事考課システムを混同していることや評価システム自体が無いこともありました。
大企業の人事関係者も含めて、中小企業の社長は人事評価とは何か?従業員は仕事で評価されることを望んでいるということを理解すべきです。能力評価と給与評価とは別次元の話です。能力評価をした上で給与評価をしてください。人的資本に投資する時代は既に始まっています。社長が自社の人材不足を嘆く前に、自分が従業員への能力評価をきちんとしているかを考えてみてください。従業員は辞めていませんか?
※1 1954年にハーズバーグがピッツバーグ心理研究所とともに200人のエンジニアと経理担当事務員におこなった調査から確立された「動機づけ理論」