非正規雇用を辞める時期

日本の年収が30年間「横倍」が続いています。社会全体が地盤沈下しているように感じられます。バブルが弾けてから30年が経つのに未だに日本は「復興」していません。

その原因の一つは非正規社員(社会保険に加入していない人)の増大があげられます。非正規=厚生年金が貰えないという「老後の貧困」が存在するからです。私は、この問題を「社会的課題」と捉えて、解決策を見出すことが日本の「復興」に繋がることだと思っています。

解決策はあります。パート・アルバイト、非正規社員という人々に社会保険に加入して貰うことです。過去にこの重大な社会的な決断をし実行した国がドイツです。2003年、当時のシュレーダー政権が中小企業経営者の反対を押し切って構造改革を断行しました。その時に言った言葉は経営者にとっては厳しい言葉だと思います。「人を雇うということは、その人の人生に責任を持つことである。社会保険を払えない企業は、そもそも人を雇う資格が無いのだ」。「鉄血宰相ビスマルク(注1)の精神に反する」とも言い、「パート・アルバイトに支払う余力が無ければ、企業が払えばよろしい」とも言い切りました。この正論に怒った中小企業経営者によってシュレーダーは選挙で敗北しましたが、次に登場したメルケル政権が「この精神」を引き継ぎ、今のドイツの社会保険のシステムが確立しました。注2

やるかやらないかは経営者の考え方一つです。人事考課もきちんとやらない、能力評価もしない経営者は労働者にとっては害悪以外の何物でもありません。人件費を捻出するためには、大企業や消で費者に売る「単価」を上げる必要があります。どうやったら、顧客に高く買って貰えるかを考えるのは経営者の仕事です。従業員の能力を正しく評価し人事考課を行って、賃金に反映させるとが必要なのです。そすれば従業員が様々な意見を言うようになります。頭の中が「バブルが弾けた状態」でいる人は経営者に向いていないということです。どんな企業にも突破口はあります。資金繰りと同時に考えてみることをお勧めします。

注1:ドイツ(プロイセン)に社会保険を最初に導入した首相

注2:出口治明[2020]『還暦からの底力』講談社現代新書