人材育成の3つの間違い(1)
1月13日の新聞の一面に「黒字リストラ拡大」との見出しがありました。2019年に早期・希望退職を実施した上場企業35社のうち最終損益が黒字であった企業が6割を占めたとの記事でした。味の素は、2020年1月から50歳以上の管理職の1割強にあたる100人程度の希望退職者を募集するとのことです。
通常、企業の管理職といえば部下の人材育成の責任者のはずです。この責任者を人員削減するということは、部下の教育に重きをおかないということを意味します。味の素という企業は、それで大丈夫なのでしょうか?年齢の高い人=給料が高いという給与体系自体にも危うさを感じます。私の知人が所属している大企業では、45歳になると人事部から「自己啓発の勧め」を受けるそうです。50歳になった時に関連会社への出向を受け入れるか、給与は上がらずに閑散部署に回されるかを選択するそうです。ほとんどの人は出向した時に役に立つ人間でいられるために自己啓発をおこなうそうです。
この制度が良いか悪いかを別にして、人材育成の考え方を間違っている日本の企業経営者がいかに多いかがわかります。目先の利益ばかりを追いかけて、人材に投資をおこなわずに早期退職を実施する企業には人事戦略が無いといえます。人は、適材適所で配置しなければ能力を発揮できずにむしろ「害」にさえなります。ジョブローテーションを間違えると人的資源は上手く活用できなくなるものです。
企業がメンバーシップ型で採用する人材に、給与待遇を現在よりも高くして、評価システムを充実させていけば、配置のミスマッチを防げるはずです。従業員が会社に評価されていると感じれば、積極的な提案をしてくるようになります。現在の日本に合わない50年以上前に決められた給与制度のみを守り続けていけば、間違いなく企業の活力は失われていくことでしょう。人を辞めさせるのではなく教育することこそが、企業の活力を増大させる近道になると私は確信しています。「人は城、人は石垣」という武田信玄の名言を思い起こして欲しいものです。今回は、教育者である中間管理職を辞めさせるという一つ目の間違いを指摘しました。